入試システム改良|予報の手がかりを、統計の決まりで選び直す(計算の前の説明)

答えを見ずに、先に決めた決まりだけで手がかりを選ぶ

2026年11月3日作成、11月6日に第6節の「たまたま」の説明を書き直した。数学を知らなくても読めるように、手順を1つも飛ばさずに書いた。たとえの数の印がある数は説明のための作り話で、本物のデータではない。本物の数の印がある数は、記録から写した。

この説明の順番
  1. 何を知りたいのか
  2. 「手がかり」とは
  3. いまの予報の弱いところ
  4. 今回やることの全体
  5. 道具1 納めそう度を計算する
  6. 道具2 「本当に関係ある?」を確かめる
  7. 道具3 見分ける力を測る
  8. 道具4 丸暗記していないかを確かめる
  9. 道具5 手がかりを1つずつ足す
  10. 道具6 選び方ごと練習する
  11. 道具7 外れの大きさを測る
  12. 2月にどちらを使うか
  13. 人数の見込みは変わらない
  14. 気をつけること
  15. 了承してほしいこと

1何を知りたいのか

2月の合否判定のとき、合格した人のうち何人が入学金を納めるかを前もって知りたい。もう1つ、誰が納めそうかも知りたい。

これを当てる仕組みを、ここでは「予報」と呼ぶ。天気予報が「明日の降水確率は70%」と言うように、この予報は「この人が入学金を納める確率は70%」と言う。

2「手がかり」とは

予報は、受験生ごとの情報を見て確率を出す。その情報を「手がかり」と呼ぶ。たとえば次のようなもの。

手がかりの例どこから分かるか
日大一を第一志望に書いたか出願のときのアンケート
申込が早かったか出願の記録
合格点をどれくらい上回ったか入試の点数
学校に来たことがあるか出願のときのアンケート

使える手がかりは、2月の判定の時点で分かるものだけ。判定のあとに分かること(あとで辞退したかどうかなど)は、予報には使えない。

3いまの予報の弱いところ

いまの予報(名前はM1d)の手がかりは、「これは関係がありそうだ」という理由と、過去の定着率を人が見て選んだ。

人が見て選ぶと、「たまたま過去に当たっていたもの」を選んでしまうことがある。そのため「統計の決まりで選んだ」とは言えない。

そこで今回は、手がかりを選ぶ決まりを先に紙に書いて固定し、その決まりだけで選び直す。新しい版の名前はM1eとする。

4今回やることの全体

  1. 候補を全部ならべる。2月の判定の時点で分かり、毎年そろっている項目すべて。本物の数中学は43個、高校一般Bは32個。
    中学の候補43個を見る
    志望・出願
    14個
    • ★日大一を併願校1(第一志望)に書いた
    • ★日大一を併願校2に書いた
    • ★併願校に、日大一より偏差値が10以上高い学校がある
    • 併願校の偏差値(高いほうの学校)
    • 併願校の偏差値(低いほうの学校)
    • 併願校の偏差値が分からない
    • 日大の付属校を併願
    • 他大学の付属校を併願
    • 付属校(日大か他大学)を併願
    • 付属でない私立校を併願
    • ★申込の早さ(何日目に申し込んだか)
    • 最初の申込が2月1日以降
    • 申込が受付開始から3日以内
    • 日大一の入試に1回だけ出願した
    入試の点数
    1個
    • ★合格点をどれだけ上回ったか
    本人・住まい
    6個
    • 女子
    • 住所:江東・墨田・江戸川
    • 住所:台東・中央・葛飾・足立・荒川・千代田
    • 住所:市川・船橋・浦安
    • 住所:千葉のそのほか
    • 住所:東京・千葉以外
    家族・通学
    5個
    • ★校友子女(家族が卒業生・在校生)
    • 家族に本校卒業生がいる
    • 兄姉が本校在校生
    • 通学30分以内
    • 通学60分を超える
    塾・勉強・検定
    13個
    • ※大手4塾
    • ※難関志向の塾
    • ※中堅・地域の塾
    • ※個別指導・家庭教師の塾
    • 勉強の方法:個別・家庭教師
    • 勉強の方法:集団と個別の併用
    • 勉強の方法:塾なし
    • 勉強の開始が早い(1〜3年)
    • 勉強の開始が遅い(5・6年)
    • 勉強の開始月が2月
    • 英検を持っている
    • 漢検を持っている
    • 数検を持っている
    知った・イベント
    4個
    • ネット検索で知った
    • ★来校した(学校に来る会に参加した)
    • 配信を見た
    • どの会にも参加していない
    高校一般Bの候補32個を見る
    志望・出願
    11個
    • ★入学手続延期を申し出た
    • ★第1志望校が公立
    • ★第1志望校が、日大一高より偏差値が5以上高い
    • 第1志望校の偏差値
    • 第1志望校の偏差値が分からない
    • 第1志望校が日大の付属校
    • 第1志望校が他大学の付属校
    • 第1志望校が付属でない私立校
    • 第2志望校が日大一でない
    • ★申込の早さ(何日目に申し込んだか)
    • 申込が受付開始から3日以内
    入試の点数
    1個
    • ★合格点をどれだけ上回ったか
    本人・住まい
    5個
    • 女子
    • ★千葉県に住んでいる
    • 住所:江東・墨田・江戸川
    • 住所:台東・中央・葛飾・足立・荒川・千代田
    • 住所:市川・船橋・浦安
    家族・通学
    2個
    • 通学30分以内
    • 通学60分を超える
    塾・勉強・検定
    10個
    • 集団の進学塾
    • 勉強の方法:個別・家庭教師
    • 勉強の方法:集団と個別の併用
    • 勉強の方法:塾なし
    • 勉強の開始が早い(中1)
    • 勉強の開始が遅い(中3)
    • 英検を持っている
    • 英検準2級以上
    • 漢検3級以上
    • 数検を持っている
    知った・イベント
    3個
    • ネット検索で知った
    • 配信を見た
    • どの会にも参加していない

    ★=いまの予報(M1d)に入っている手がかり。新しい選び方では、★も特別あつかいせず、ほかの候補と同じ決まりで選び直す。※=結果を見たあとで作った分け方(14節)。計算のときは、全員が同じ値の候補や、ほかの候補と中身がまったく同じ候補を道具が自動で外し、外した理由も記録する。

  2. 候補の中から、決まりを満たすものだけを1つずつ足していく(道具5)。
  3. この選び方が本番で通用するかを、過去の年で練習して確かめる(道具6)。
  4. 全部の年を使って、同じ決まりでもう一度選び、新しい版(M1e)として固定する。
  5. 2月に、いまの予報と新しい版のどちらを主に使うかを、先に決めた決まりで決める(12)。

使うデータは、いまの予報と同じ人たち。本物の数中学の合格者1,108人(2023〜2026年度入試)と、高校一般Bの合格者347人(2022〜2026年度入試)。

この5つの手順の中で、7つの道具を使う。ここから1つずつ説明する。

5道具1 納めそう度を計算する 専門用語:ロジスティック回帰

手がかりごとに「プラス何点」「マイナス何点」を決めた採点表を作る。受験生ごとに点を足し、その合計点を確率(%)に直す。

採点表の例 たとえの数

手がかり点
日大一を第一志望に書いた+2点
申込が早かった+1点
合格点を大きく上回った−1点

合計点を確率に直す表 たとえの数

合計点−1点0点1点2点3点
納める確率27%50%73%88%95%

たとえば、第一志望に書いて、申込も早かったAさんは、2点+1点=3点で、納める確率は95%。第一志望ではなく、合格点を大きく上回ったBさんは、−1点で27%。

点が高いほど確率は100%に近づくが、100%を超えることはない。点が低いほど0%に近づくが、0%を下回ることもない。そうなるように決まった変換表を使う。

採点表の「何点」は、人が決めるのではなく、過去の受験生のデータから計算で決める。実際に納めた人の点が高く、納めなかった人の点が低くなるように、いちばん合う点数を探す。

人数が少ない手がかりでは、点数がとても大きな値に飛んでしまうことがある。それを防ぐブレーキ(専門用語:Firthの補正)もかける。いまの予報と同じ計算方法を使う。

6道具2 「本当に関係ある?」を確かめる 専門用語:オッズ比と95%区間

まず、関係の強さを1つの数にする

例 たとえの数 第一志望の人10人のうち、9人が入学金を納め、1人が納めなかった。第一志望でない人10人のうち、6人が納め、4人が納めなかった。

納めた納めなかった納めた÷納めなかった
第一志望の人9人1人9÷1=9
第一志望でない人6人4人6÷4=1.5

2つを比べると、9÷1.5=6。この「6」を関係の強さと呼ぶ(専門用語:オッズ比)。

読み方
・ちょうど1なら、関係なし
・1より大きければ、「納める人に多い特徴」
・1より小さければ、「納めない人に多い特徴」
まちがえやすいところ 「6」は「6倍納めやすい」という意味ではない。納めた割合は、第一志望の人が90%、そうでない人が60%で、割合で比べれば1.5倍。関係の強さは、割合の比べ方とは別の数になる。また、この数は「その手がかりのおかげで納める」という原因を表すものでもない。「納める人に多い特徴かどうか」を表すだけ。

次に、それが「たまたま」でないかを確かめる

上の例では、第一志望の人のほうが3人多く納めた。しかし、第一志望かどうかが本当は何の関係もなくても、この程度の差は出るかもしれない。それを、カードを配り直して確かめる。

  1. 20人の結果を20枚のカードにする。納めた人はピンクのカード15枚、納めなかった人は白いカード5枚。
  2. 第一志望かどうかの区別を捨てる。本当に関係がないなら、どのカードがどちらの組にあっても同じことだから。
  3. 20枚をよく混ぜて、10枚ずつ2つの山に配る。
  4. 2つの山のピンクの枚数の差を数える。本物の結果は9枚と6枚で、差は3枚だった。

配り直した山には、第一志望という意味はもうない。それでも差が出たら、それは配り方の運だけで出た差である。下のボタンで、実際に配れる。

配ってみるたとえの数
第一志望の人:ピンク9枚
第一志望でない人:ピンク6枚

いまは本物の結果。差は3枚。

差1枚
0回
差3枚
0回
差5枚
0回

3枚以上の差が出た回数:0回/0回

何回も配ると、割合は次の表に近づく。カードの配り方は全部で184,756通りあり、それを全部数えた結果である。表の枚数はピンクの枚数で、色を付けた行が本物と同じ形。 たとえの数

左の山右の山差起きる割合
10枚5枚5枚1.63%
9枚6枚3枚13.54%
8枚7枚1枚34.83%
7枚8枚1枚34.83%
6枚9枚3枚13.54%
5枚10枚5枚1.63%

差が3枚以上になるのは、上の2行と下の2行で、合わせて30.34%。およそ3回に1回である。何の関係もないカードを配るだけで、本物と同じくらいの差が3回に1回は出る。だから10人ずつの結果では、たまたまではないとは言えない。

人数を増やして、同じ実験をする

納めた割合は90%と60%のまま、人数だけを増やして、同じようにカードを配り直す。 たとえの数

人数本物の結果本物以上の差が配り方の運で出る割合
10人ずつ9人と6人30.34%(3回に1回くらい)
20人ずつ18人と12人6.48%(15回に1回くらい)
30人ずつ27人と18人1.53%(65回に1回くらい)
50人ずつ45人と30人0.10%(1000回に1回くらい)
100人ずつ90人と60人0.0001%(80万回に1回くらい)
1000人ずつ900人と600人計算上、まず起きない

割合の差はどの行も同じ30ポイントである。それでも人数が増えると、配り方の運だけではその差に届かなくなる。ふつうは20回に1回(5%)を目安にして、それより起きにくければ「たまたまとは言いにくい」と考える。この例なら、20人ずつ(6.48%)ではまだ言えず、30人ずつ(1.53%)で言える。なお、意味のないものを作ってどれくらい起きるかを見るこの考え方は、道具5の「くじの線」でもう一度出てくる。

横棒は、この実験をまとめて1本にしたもの

カードの実験で確かめたのは、「関係の強さは1(関係なし)かもしれない」という1つの値だけである。同じ考え方で、「本当は2かもしれない」「本当は100かもしれない」と値を変えて試し、捨てられなかった値を残して並べる。これが横棒である(専門用語:95%区間)。同じ調べ方を何度もしたら、本当の値が20回に19回は入る範囲になる。だから1が横棒の中に残っていれば、「関係なし」を捨てられなかったということになる。

例 たとえの数 納めた割合は上と同じ(第一志望の人は90%、そうでない人は60%)のまま、人数だけを10人ずつと1000人ずつに変えてみる。関係の強さは、どちらも同じ「6」になる。ちがうのは、横棒の長さ。

図の見方
・丸=いちばんありそうな関係の強さ(どちらも6)
・横棒=本当の関係の強さがありそうな範囲
・赤い線=1(関係なし)
横棒が赤い線にかかっていると、「本当は関係なし」の可能性が残る。横棒が赤い線から離れていれば、関係があると言える。
赤い線=1(関係なし) 10人ずつのとき:範囲 0.5〜68 0.568 横棒が長く、赤い線にかかっている → たまたまかもしれない 1000人ずつのとき:範囲 4.7〜7.6 4.77.6 横棒が短く、赤い線から離れている → はっきり 010203040506070

下の目盛りは関係の強さ。人数が多いほど、横棒は短くなる(範囲がしぼられる)。

横棒が赤い線(1)にかからなければ、その差は「たまたま」とは言いにくい。これを「効き目がはっきり」と呼ぶ。
まちがえやすいところ 「はっきりしない」は「関係がない」ではない。10人ずつの例でも、丸の位置は6のままである。言えるのは、この人数では、関係があるともないとも決められないということ。

図の横棒も本番の横棒も、カードを配って出した数ではなく、式で計算した数である(本番の計算の専門用語:プロファイル罰則尤度)。カードの実験は、考え方を見るためのもの。

7道具3 見分ける力を測る 専門用語:AUC

予報がどれくらい上手に「納める人」と「納めない人」を見分けられるかを、0.5から1までの1つの数で表す。

考え方:点の高い順に並べてみる

予報が上手なら、実際に納めた人には高い点が、納めなかった人には低い点が付いているはず。だから、全員を点の高い順に1列に並べると、上のほうに「納めた人」が集まり、下のほうに「納めなかった人」が集まる。

例 たとえの数 7人の受験生(納めた4人・納めなかった3人)を、予報が付けた点の高い順に並べた。●ピンク=実際に納めた人、○白=納めなかった人。

点が高い点が低い完全に見分けた見分ける力 1.0たとえの予報80点70点65点60点50点40点30点見分ける力 0.75当てずっぽう見分ける力 0.5
・左:納めた人が全員、上に集まっている。完全に見分けられた。見分ける力は1.0。
・まんなか:だいたい上に集まっているが、白(納めなかった人)の65点と50点が、ピンク(納めた人)の60点や40点より上にまざっている。見分ける力は0.75。
・右:ピンクと白が交互にまざっている。点が見分けの役に立っていない。見分ける力は0.5(コイン投げと同じ)。

数え方:1人ずつ組にして、勝ち負けを数える

「どれくらい上に集まっているか」を数にするために、納めた人と納めなかった人を1人ずつ組にして、点を比べる。納めた人のほうが点が高ければ○(予報の勝ち)、低ければ×(予報の負け)。まんなかの例で全部の組を表にすると、こうなる。

納めた人\納めなかった人65点の人50点の人30点の人○の数
80点の人○○○3
70点の人○○○3
60点の人×○○2
40点の人××○1
○の合計9
  1. 組は、納めた4人×納めなかった3人で、全部で12組。
  2. ○は9組。×は3組(65点の「納めなかった人」に、60点と40点の「納めた人」が負けた2組と、50点の人に40点の人が負けた1組)。
  3. 9÷12=0.75。これが見分ける力。
0.75の意味 納めた人と納めなかった人を1人ずつ選んで比べると、4回に3回は、納めた人のほうに高い点が付いている。
読み方
・0.5なら、コイン投げと同じ(2回に1回しか当たらない)
・1なら、完全に見分けられる(いつも当たる)
・本物の数いまの予報は、過去の練習で0.58〜0.78だった

8道具4 丸暗記していないかを確かめる 専門用語:5分割の交差検証

困りごと:作った人で試すと、良く見えすぎる

採点表(道具1)は、過去の受験生にいちばん合うように点数を決める。だから、採点表を作るのに使った人で当たり具合を試すと、よく当たって見える。

たとえ テストの問題と答えを先に見てから勉強した生徒は、そのテストで高い点を取る。でも、それは本当の実力ではない。新しい問題を出されたら、点は下がる。

採点表も同じで、作った人たちの中にある「たまたまの特徴」まで覚えてしまう。たとえば、作った人の中で、たまたま「申込が月曜日だった人」に納めた人が多かったとする。すると採点表は「月曜日に申し込んだ人は+1点」と覚えてしまう。作った人で試すとよく当たるが、来年の受験生には当たらない。

解決:一部の人を「かくしておく」

そこで、採点表を作る前に、一部の人をかくしておく。かくした人は、採点表づくりに一切使わない。採点表ができたら、かくしておいた人に当てて試す。採点表にとっては「見たことのない人」なので、新しい受験生に当てるのと同じ条件で試せる。

例 たとえの数 受験生が100人いたら、くじで20人をかくし、残り80人で採点表を作る。

採点表を作る80人かくしておく20人① 80人だけで  採点表を作る② 見たことのない  20人に当てて試す
例 たとえの数 作った80人で試すと見分ける力は0.85、かくしておいた20人で試すと0.70だった。本当の力に近いのは0.70のほう。0.85との差の0.15が、丸暗記で良く見えていた分。

さらに:かくす人を入れ替えて、5回やる

1回だけだと、かくした20人が、たまたま当てやすい人たち(または当てにくい人たち)だったかもしれない。そこで、100人をくじで5つの班(20人ずつ)に分け、かくす班を1つずつ入れ替えて、5回くり返す。

1回目2回目3回目4回目5回目 1班2班3班4班5班 採点表を作る班(80人) かくしておいて試す班(20人)
  1. 1回目:1〜4班(80人)で採点表を作り、かくしておいた5班(20人)で試す。
  2. 2回目:2〜5班で採点表を作り直し、かくしておいた1班で試す。
  3. 3回目から5回目も、かくす班を入れ替えて同じことをする。
  4. 5回やると、100人全員が、ちょうど1回ずつ「かくしておいて試される側」になる。
  5. 5回分の試した結果を全部集めて、見分ける力(道具3)を1つ出す。これが、丸暗記の分を取り除いた見分ける力。
どこで使うか この見分ける力を、次の道具5(手がかりを1つずつ足す)の関門①で使う。手がかりを足したとき、「かくしておいた人」に当てても見分ける力が上がるなら、丸暗記ではなく本当に役に立つ手がかりだと考えられる。

班は、くじで「人」を分ける。年では分けない(年で分けて試すのは、道具6の役目)。

9道具5 手がかりを1つずつ足す 専門用語:前進選択

候補(中学で43個、高校一般Bで32個。4節の1のボタンで一覧が開く)の中から、次の2つの関門を両方とも通った手がかりだけを、1つずつ足していく。どちらか1つでも通らなければ、足さない。

2つの関門

関門① 予報が良くなる その手がかりを足すと、見分ける力(道具3を、道具4の「かくしておく」やり方で測ったもの)が、「くじの線」より大きく上がる。

くじの線とは

意味のない手がかりでも、足すと見分ける力がたまたま少し上がることがある。コインを投げて表が多めに出ることがあるのと同じ。だから「少しでも上がったら通す」では、意味のない手がかりまで通ってしまう。

そこで、わざと意味のない手がかりを作って、どれくらい上がってしまうかを先に測る。

大事なのは、くらべる相手をそろえること。本物の候補は、各回で43個(中学)の中からいちばん上がったものを見る。43個も試せば、意味のない候補でも1つくらいはたまたま大きく上がる。だから、意味のない手がかりのほうも43本作って、その中のいちばんとくらべる。

たとえ 43人のクラスでいちばん足の速い子が「すごい」かどうかは、ほかの43人のクラスのいちばんとくらべて決める。別のクラスの1人ずつとくらべたら、どのクラスのいちばんも「すごい」に見えてしまう。
  1. 受験生一人ひとりに、くじで「当たり」か「はずれ」を半々の確率で付ける。これが「くじの手がかり」。納めたかどうかとは何の関係もない。
  2. くじの手がかりを、まだ試していない候補と同じ本数(中学のはじめなら43本)作る。1本ずつ試しに足して見分ける力の上がり幅を測り、その中でいちばん上がった幅を記録する。
  3. くじを全部引き直して、これを100回くり返す。「いちばん上がった幅」が100個できる。
  4. 100個を大きい順に並べて、上から5番目の値を「くじの線」にする(100回のうち5回しか超えない高さ)。全部が下がっていたら、線は0。
  5. 本物の候補のいちばんが、くじの線より大きく上がったときだけ、関門①を通す。
なぜこれで「たまたま」を防げるのか もし候補が全部意味のないものだったら、その中のいちばんがくじの線を超えるのは、およそ20回に1回(100回に5回)しか起きない。だから、くじの線を超えた手がかりは「たまたまではなく、本当に予報の役に立っている」と言いやすい。道具2の「20回に19回」と同じ考え方。
作ったデータでの確かめ 計算の前に、本物ではない作ったデータで確かめた。意味のない候補だけのデータを30通り作ってこの選び方を回すと、まちがって何かが選ばれたのは30回中1回(約3%)だった。
例 たとえの数 100回くり返した「いちばん上がった幅」を大きい順に並べると、5番目が+0.020だった。このとき、くじの線は0.020。本物の手がかりが+0.100上がれば通す。+0.015なら、くじでも起きる程度の上がり方なので通さない。
前の線(0.005)をやめた理由 前の案では「0.005以上上がれば通す」としていた。0.005は、1000組あたり勝ちが5組増えるという、とても小さな差。本物の数この線は10月22日の塾の確かめで目安として置き、10月23日の点検でもそのまま使ったもので、統計の計算から出した値ではない(記録にも理由は書かれていない)。10月23日には、ネット検索で知った(+0.007)がこの線を越えたが、たまたまの幅と判断した。くじの線は、人数に合わせて高さが自動で変わる。人数が少ない高校では、たまたまの上がり方が大きいので線が高くなり、人数が多い中学では低くなる。
関門② 効き目がはっきり その手がかりの関係の強さの横棒(道具2の図)が、赤い線(1)にかからない。

関門①だけだと、「たまたま当たった手がかり」が入りやすい。関門②だけだと、「はっきり関係はあるが、予報の役には立たない手がかり」が入る。両方を求めて、この2つを減らす。

足し方の手順

  1. 最初は、年ごとの違い(その年の全体の納め具合)だけを入れて、手がかりは1つもない状態から始める。このときの見分ける力を測る。
  2. くじの手がかりを候補と同じ本数作り、100回くり返して、この回の「くじの線」を測る。
  3. 候補を1つずつ「試しに足して」、見分ける力がどれだけ上がるかを全部測る。
  4. いちばん上がった候補について、関門①(くじの線より大きく上がったか)と関門②(横棒が赤い線にかからないか)を見る。
  5. 両方通れば、その候補を本当に足す。通らなければ、2番目に上がった候補を同じように見る。3番目、4番目と順に見ていく。
  6. 1つ足せたら、2に戻って、くじの線を測り直し、残りの候補でもう一度くり返す(手がかりが増えると、くじの線の高さも変わるため)。
  7. 関門①を通る候補が1つもなくなったら、終わり。
  8. 足した手がかりの数が上限に届いたときも、終わり。

例 たとえの数

回くじの線試した候補見分ける力上がった分関門①関門②結果
はじめ(手がかりなし)0.600
1回目0.020第一志望0.700+0.100○○足す
2回目0.006住所0.709+0.009○×足さない
2回目0.006申込の早さ0.707+0.007○○足す
3回目0.005検定0.709+0.002×終わり

1回目は、第一志望の上がり(+0.100)がくじの線(0.020)より大きく、横棒も赤い線にかからなかったので足した。2回目では、住所がいちばん上がった(+0.009。くじの線0.006より大きい)が、関門②(はっきり)を通らなかった。そこで2番目に上がった申込の早さ(+0.007)を見て、両方通ったので足した。3回目は、いちばん上がった検定でも+0.002で、くじの線(0.005)に届かなかったので、そこで終わり。選ばれた手がかりは「第一志望」と「申込の早さ」の2つ。

上限

手がかりは、入学金を納めなかった人の数の10分の1までしか足さない。手がかりが多すぎると、丸暗記に近づくから。本物の数中学の4年分では納めなかった人が282人なので、上限は28。高校の最初の練習(1年分)では39人なので、上限は3。

10道具6 選び方ごと練習する 専門用語:入れ子の前向き検証

ここがいちばん大事なところ。

全部の年を使って手がかりを選び、その手がかりで過去の年を当ててみると、とても良く当たって見える。でもそれは、答えを見てから手がかりを選んだのと同じこと。模試の問題を見てから勉強法を決めて、その模試を受けるようなもの。

そこで、選ぶことも、採点表を作ることも、当てる年より前のデータだけで行う。中学では次の3回の練習をする。

練習1練習2練習3本番用 20232024202520262027 2月に使う

緑=手がかりを選び、採点表を作る年 ピンク=当てる年(選ぶことにも作ることにも使わない)

  1. 練習1:2023年度だけで、道具5の選び方を最初からやる。選ばれた手がかりで採点表を作り、2024年度の受験生に当てる。見分ける力(道具3)と外れの大きさ(道具7)を記録する。
  2. 練習2:2023〜2024年度で、選び方を最初からやり直す。2025年度に当てて記録する。
  3. 練習3:2023〜2025年度で、選び方を最初からやり直す。2026年度に当てて記録する。
  4. 同じ3回の練習を、いまの予報(M1d)の手がかりでもやって、結果をならべる。
  5. 本番用:最後に2023〜2026年度の全部で選び方を1回やり、選ばれた手がかりを新しい版(M1e)として固定する。これを2027年度入試(2027年2月)に使う。

高校一般Bは、2022年度から始めて4回練習する(2022→2023、2022〜2023→2024、2022〜2024→2025、2022〜2025→2026)。

道具4(班に分ける)は、手がかりを選ぶときの中で使う。道具6(年で分ける)は、選び方そのものを試すときに使う。班は「人」で分け、練習は「年」で分ける。役割がちがう。

練習の回によって、選ばれる手がかりがちがうことがある。それも「選び方がどれくらい安定しているか」という結果として、そのまま記録する。

11道具7 外れの大きさを測る 専門用語:Brierスコア

天気予報の採点と同じやり方で、予報がどれくらい外れたかを測る。

  1. 1人ずつ、「予報した確率」と「実際」を比べる。実際は、納めたら1、納めなかったら0とする。
  2. その差を2回かける(2乗する)。
  3. 全員分を平均する。小さいほど良い予報。
例 たとえの数予報実際外れ
Cさん90%納めた(1)(1−0.9)×(1−0.9)=0.01
Dさん90%納めなかった(0)(0−0.9)×(0−0.9)=0.81
Eさん50%どちらでも0.5×0.5=0.25

自信を持って当てると外れは小さく、自信を持って外すと外れは大きい。見分ける力(道具3)は「順番」しか見ないが、これは「何%と言ったか」の当たり具合まで見る。

122月にどちらを使うか(計算の前に決めておく)

中学・高校それぞれで、道具6の練習の結果をならべて、次の決まりで決める。

新しい版(M1e)の外れの大きさ(道具7)の平均が、いまの予報(M1d)以下で、
かつ、新しい版の見分ける力(道具3)の平均が、いまの予報以上。
この2つを両方満たしたら、新しい版を「主」にする。満たさなければ、いまの予報が「主」のまま。

前の案では「見分ける力が0.01以上は下がっていない」としていたが、0.01も決め打ちの許し幅だったので外した。新しい版が、外れの大きさでも見分ける力でも、いまの予報と同じか上回るときだけ入れ替える。

「主」にしなかったほうも捨てずに、「並べ」(参考として横にならべる)にする。2027年度の結果を見たあとで、この決まりも、どちらが主かも、入れ替えない。2027年度の結果は、まだ誰も見ていないので、いまなら入れ替えを決めてよい。

13人数の見込みは変わらない

「何人納めるか」の見込み(例:中学で288人合格なら203人)は、手がかりを選び直しても変わらない。

人数は、手がかりではなく、次の計算で出しているから。

見込みの人数 = 合格者の数 × 割合

割合は、本物の数中学は去年の割合(70.5%)、高校一般Bは過去5年の平均の割合(45.4%)。手がかりの選び直しで変わるのは、一人ひとりの「誰が納めそうか」の見分けのほう。

14気をつけること

候補の中に、後から作った分け方がある 大手4塾・難関志向の塾・個別指導の塾という分け方は、過去5年の手続を見たあとで決めた。選び方を先に決めても、この「後から見た」分は消えない。結果の表に印を付けて書く。
比べ方は、いまの予報に有利 いまの予報の手がかりは、過去の結果を見て選んだので、練習の値が実力より良く見えている。新しい版の練習の値には、その分が入らない。
人数が少ない 高校一般Bの最初の練習は1年分の66人(上限は3)。選ばれる手がかりが回ごとにちがったり、1つも選ばれなかったりすることがある。それも結果として書く。
統計の決まりで選んでも、当たる保証にはならない 本当の確かめは、まだ誰も見ていない2027年度入試の結果で行う。

15了承してほしいこと

了承すること中身
決まりのとおりに計算するこの説明の決まり(計画書)を固定してから計算する。結果を見たあとで、候補・関門・上限・2月の決め方を変えない。計画書が1文字でも変わると、計算の道具が止まるようにしてある。計算の途中で、いまの予報の過去の練習の値が記録と一致するかを確かめ、合わなければ止める。
個票を読み、学び直す過去5年の個票を、この端末の中だけで読む。外部へは送らない。課金もしない。案件フォルダに残すのは、人数・割合・関係の強さ・選ばれた手がかりの名前だけ。
新しい版を1つ固定する本番用に選んだ組を、M1eとして固定する。いまの予報(M1d)や、それより前の版は消さず、上書きもしない。

決まりの正本:統計で選ぶ版_計画_20261103.md。本物の数の出どころ:人数=M1c・M1d固定記録(2026-10-20)、見分ける力0.58〜0.78=同記録の練習(中学0.663〜0.76、高校0.579〜0.778)、0.005=塾分類・出願回数の過去確認(2026-10-22)と入力項目の総点検の計画(2026-10-23)、割合=予測の幅_案A_仕様(2026-10-31)。